船橋市 得意客つかんだ五輪グッズ 子供が歓声、大人は胸算用
東京五輪・パラリンピックのマスコットの公式グッズがオフィシャルショップにお目見えし、にぎわいを見せている。7月に名前が決まると、早速ぬいぐるみやTシャツなどの販売を開始。マスコット人気は高く、売り上げは好調という。公式グッズは機運情勢と、組織委員会の収入増に直結するため、マスコット人気への大会関係者の期待は高まる一方だ。
「ミライトワだ、かわいい!」「ソメイティもほしい」――。
東京都新宿区にオープンしたオフィシャルショップの初の常設店、「東京2020オフィシャルショップ新宿西口店」には、7月の開店以降、家族連れや外国人の団体、帰省前に土産物を捜す人らがひっきりなしに訪れている。
千葉県船橋市から来た小学5年の男子児童(10)は、「ミライトワがかっこいい。周りで持っている人はいない」と、Tシャツとキーホルダー、バスタオルを買った。全国の小学校で行われたマスコットを選ぶ投票でも、現在のデザインに1票を投じたという。
東京都中野区の主婦(56)は水戸市に住む親戚へのお土産に、マスコットをプリントした文具やTシャツを購入。「キャラがかわいいと思っていた。男の子向けには青いミライトワの色合いがぴったり」と笑顔を浮かべる。
マスコットの公式グッズは発売時、約130点を取りそろえた。組織委によると、特にぬいぐるみの売れ行きが良く、数カ月分の在庫は準備していたが、増産体制に入ったという。最も高額な全長約130センチの特大ぬいぐるみ(税別13万円)も販売好調で、組織委マーケティング局の間典彦ライセンシング部長(52)は「スタートダッシュとしては想像以上」と顔をほころばせる。
今回販売を始めたマスコットの公式グッズは全体的に価格帯は低めに抑え、シールや缶バッジ、ノートなどは数百円台とした。小学生が投票で選んだマスコットであることを考慮し「手の届きやすい値段で、小学校で使える文房具関係を多くした」(間部長)という。
■「公式」承認には高いハードル
マスコットには、大会機運情勢とともに、公式グッズの売り上げ増への期待がある。マスコットの人気が高まれば「大会への関心が高まるうえ、公式グッズの売り上げも押し上げる」(関係者)からだ。12年のロンドン大会では、マスコットのデザインが「かわいくない」と不評。マスコットのグッズに人気が出ず、売り上げに占める割合も低かったという。
現時点でマスコット人気は上々の滑り出しで、現在、公式グッズを販売できるライセンス契約を結んでいるのは56社だが、マスコットの名称の発表以降に問い合わせが増え、100社を超える見通し。オフィシャルショップも今後増える予定で、大会に向け、マスコットの公式グッズを学校や職場などで目にする機会が増えていきそうだ。
もっとも東京五輪・パラリンピックのエンブレムやマスコットを付けた公式グッズ(東京2020公式ライセンス商品)を販売するためには、大会組織委員会の許諾を得る必要があり、どんな商品でも認められるわけではない。「五輪・パラリンピックのイメージを損なわないスタイルと品質」を満たす必要がある。
「この素材で子供が触ってもけがをしないか」「マスコットの色味が、制作者のイメージと違うのではないか」
マスコットの公式グッズの販売前、組織委のライセンシングチームは連日、素材や色合いなどについて、メーカーとの間で協議を重ねたという。「ぬいぐるみだけでも10回ぐらいやりとりしたんじゃないか」とライセンシングチームの永野明子ディレクター(47)は振り返る。
ライセンシングチームの検討を経て組織委と契約し、公式グッズとして販売されている商品は、7月末時点で1300点超。ピンバッジやTシャツ、タオルなどの定番商品を中心に、外国人のお土産需要も狙ったうちわや浴衣など日本らしさを前面に出したものも。
■売り上げは組織委の収入に直結
公式グッズの売り上げは組織委の収入にも直結する。メーカー希望小売価格の5%(一部は7%)に製造数を掛け合わせた金額が、ロイヤルティーとして組織委に入る。組織委は大会予算の収入計6千億円のうち、公式グッズ分を140億円と見込む。ロンドン大会やリオ大会よりも高い設定といい、間典彦ライセンシング部長は「近年の大会では一番高い目標になっている」という。
売れそうであれば、何でもいいというわけではない。五輪・パラリンピックのイメージを損なうものは認められない。
具体的にはどういう商品を指すのか。永野さんは「『五輪・パラリンピックのもの』といって恥ずかしくないものですね。特にマスコットは子供たちが使うので、それに見合うものでないと」と解説する。たとえば、たばこはNGで、子供に有害なものは当然認められない。
一見そうでないように見えて、実はライセンス商品なのが、既に販売が始まっている「五輪協賛宝くじ」や、切手や年賀はがきなどだ。ほかにも色々な案がメーカーから寄せられているといい、「ニーズがあり、ブランド価値に合えば、柔軟に対応する」(永野さん)という。過去に例がない商品は、その都度、国際オリンピック委員会(IOC)と協議し、確認するという。
今後も、日本の伝統工芸技術を駆使したり、暑さ対策を意識したり、幅広く商品展開していく予定という。大会の公式グッズは最終的に1万点を超す見通しだ。